独り占め (キョンハル前提・ハルヒ独白)



あーあ、つまんない。

口に出しては言わないけれど、とてつもなくそう思う。
目の前にはパソコン。
さすがコンピ研にやってもらっただけあって、快適に動く。
インターネットは楽しくて、色んな情報が得られるって言うのに…。

「大丈夫ですか?朝比奈さん」
困ったような、可愛いという思いが抑え切れないような声。

本気で困っていない、気遣う声。

画面から顔をあげれば、みくるちゃんがお茶の準備の最中にちょこっとミスをしたみたい。
さすがあたしが見込んだ子だけあって、どじっぷりもかわいい事この上ないのだけど…。

とっても面白くない…。

「長門も、傍観してないで何とか反応しろ。ったく…」

そうして今度はそれに僅かに巻き込まれていた有希へと手を貸す。

物静かでいいけど、あんまり頓着しない有希には誰かが手を貸した方がよくって。
キョンが貸す手は正しいと思う。


でも、全然面白くない…。

みんないるのに、SOS団はここに揃っているのに。
キョンを見る事が出来る場所にいるのに。

なんで、こんなに楽しくないんだろう…。

パソコンをやってても、掛け合いを聞いてても。

全然楽しくない…。
あたし、なんでここにいるんだろう…。

そんな事を考えたら突然目元を思い切り拭いたくなって…。

「どうした?ハルヒ」

どうして、そんなタイミングで声をかけてくるのかしら、キョンは…。

「何よ」
みくるちゃんや有希の相手してたんだから、突然声かけてくる理由なんてわかんない。

「別に何でもないが…また何か企画でも考えたのか?」
確かにパソコンはやってたけど、考えようと思ってた企画なんて全然進んでない。
候補として脳内にあったものなんか吹っ飛んじゃってる。

でも、なんで進んでないかなんて理解したくもないから。

「そうよ。新たな企画じゃんじゃん進んでるんだから、キョンもしっかりやりなさいよ!」
そう言って、指差して、誤魔化そうとしたのに…。

「はいはい。どこまでも、団長殿」
聞こえた嘆息。
繋がってしまった視線。

どうしよう。
どうしよう…。

みくるちゃんの相手をしながら有希の相手もしてた視線が、こっちを見てる。
ゆっくりと微笑んで、口元に笑みを浮かべて、しょうがないなって、笑って…。

その笑みが、あたしだけを見てる。

まずい、どうしよう…。

でも、重なる視線に顔に熱が集中しそうで。

「さーて、あたしはこっちをやっちゃうから!」
「企画のまとめか?」
「そうよ!」
キョンの言う事なんて微塵も当たってないのに、それを言い訳に画面に目を戻す。

それでも、まだ視線がこっちを向いているみたいで。
その視線をあたしが独り占めできているみたいで。

「あー、もうっ!」
嬉しくて、なんだかとっても悔しかった。


* back *


キョンの目に口ほどに言っていただこうかと…。