(オリキャラ拓磨父登場・オリジナル色強いのでご注意ください)
鳴り響く電話に、妻が反応する。
しかし、それも僅かである上に随分と微笑ましい様子で戻ってきた。
「当代玉依姫さまからあの子に、ですよ」
そして、問いかける前に答えてくれた妻に、そうか、とだけ返して、彼は再び新聞へと視線を戻した。
守護五家に生まれた以上、運命など定まっていた。
守護者である事、また次代の守護者の親になる事。
幸か不幸か彼自身と同世代の玉依姫は現れなかったものの、父や自身、そして息子が守護の役についていた先代。
そして突如現れた当代玉依姫。
彼女がやった事は風習からあまりに外れていて、またそれに影響された息子の行った事もまたあってはならないはずの事だった。
鬼崎にとっての汚点となるはずだった。
鬼崎の守護者を殺してでも、玉依姫を確保する事。
すべては鬼斬丸封印のために…。
なのに、あの2人はそれすら打ち破ってしまった。
鬼斬丸はもはや二度と目覚める事はない。
守護者として生きるしか道のない鬼崎に生まれた者にとって、役割を終える事ができるのは喜びであるのか、悲しみであるのかわかりはしない。
それでも、更なる力を身につけ、汚点どころか玉依姫を守りきった息子。
おそらく、ここ数代における守護者の中で最強の力を振るう者。
その息子が、当代玉依姫と笑い合うことに、彼はどこか安堵を覚えていた。
なぜだかわからない。
親として、守護者の運命に縛られていた息子の穏やかな姿を喜んでいる部分も感じる。
しかし、それよりももっと強く、鬼崎の血が教えてくる。
これで、よかったのだと。
ようやく、めぐり合えたのだと。
長き年月を経て、ようやく側にいることが許されたのだと。
ようやく鬼が玉依姫と触れ合えた事に対する喜び。
そして、自分より強く鬼崎の力を持つ息子が感じる感情は、自分より強いに違いない。
そこのところを、聞いてみてもいいのかもしれないと不意に思った。
彼より先代の守護者として、また親として…。
そして、居間に現れた息子に視線をやれば、当然の如く視線を返してきた事を皮切りに、彼はこう切り出す。
「拓磨、お前も18になったが当代玉依姫さまとの事はどうするんだ?」
自分の一言に、僅かに表情を変えた息子に対して、父親として下世話かと思いつつ、彼は小さく苦笑した。
* back *
拓磨の誕生日は一週間近く前から気にしていたのに、SSが書けずに過ぎてしまいました…。
珍しく記念日を覚えていただけに悔やまれる…!!(基本的に過ぎてから気付く人)
次の珠紀こそはSS付きでお祝いしたく…!!
という後悔の念の元、少し誕生日と関係したものを…??
誕生日の後日談だと考えていただければいいかなぁとか…
オリジ色強すぎでごめんなさい…!!(脱兎)