口封じ (本編後・拓珠)



そっと確かめるように触れるだけの、優しい口付け。

柔らかい感触が触れた唇から全身に広がる甘い感覚を惜しむように離して瞳を覗き込めば、戸惑いと期待の色が見える気がする。
それに鼓動が更に早められるような気がしながら、瞳から逃れるように拓磨は珠紀へと口付けた。

軽く悪戯に重なっていた口付けが徐々に熱を生む。

その熱に反応した珠紀の瞼が震え、拓磨の服を掴む力が僅かに強まる。
その様があまりに可愛らしくて、駆り立てられた欲に従うままに僅かに離れた距離を惜しむように再び唇を重ねて、拓磨は深く口付けた。

「ん…、ふぅ」

まだ戸惑いがちの舌を絡めて、吸い上げて。
長く、甘く、貪欲に。

力が入らなくなった体を委ねるようにしてくる珠紀を抱きしめ、拓磨はようやく珠紀を解放した。

ゆるりと開かれる瞳に拓磨が映れば、珠紀は幸せそうに表情を緩める。

そして、
「好き、大好きだよ拓磨」
濡れた唇から囁かれた言葉に、拓磨は首筋に顔を埋めるようにしてから大きく嘆息した。

「おまえ、だからどうしてそういう台詞を素で…」
「だって、本当の事だし」
小さな笑い声と共に珠紀は拓磨に抱きつく腕に力を込めれば、拓磨はその腕の中の感触をゆっくりと味わっていた。

胸にじんわりと広がる感情。
胸を締め付けて、思考を鈍らせて、側にいる以外に考えられなくなる。

多分、『愛しい』という感情。

「こうしていられて、私は幸せだよ」
そうして微笑まれた台詞に、口付けによって生まれていた熱が更に過熱して。

「おまえ、責任とってもう黙っとけ」
拓磨は息もつけないほどに珠紀に口付けを与えた。

* back *

この後どうなったかはご想像にお任せいたします。
キスだけで1つ話を書きたくなった結果の作品です
後半少し変わってしまったのですが、キスの描写だけで1作品かけるほどに描写力がほしいなぁという修行も兼ねつつ
なので、もしかしたら加筆修正される可能性が非常に高い作品になってしまいました(汗)
もっと、艶っぽく書けるように研究努力して書き直したいです…(涙)